佐井村では、新しい漁業者を募集する「漁師縁組事業」を行っています。
(研修期間を経て漁師になる支援制度です→詳しくは佐井村HP
漁師になりたい人、別になりたくないけど知りたい方にも、佐井村の漁業について知っていただくため、「漁師インタビュー」を実施します。
第1回は、佐井村矢越の漁師、木下 昇次(きのした しょうじ)さん(65)です。
ベテラン漁師の木下さんは、採介藻とイカの定置網漁業に取り組んでいます。
佐井村では、採介藻を中心に取り組む漁師が最も多いです。
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(写真 わかめオーナー事業でわかめの種付け作業をする木下さん)
「採介藻」とは、船から箱メガネで水中を除いて貝類や海藻、うに、ナマコなどを取ったり、浜で海藻や貝類を取ったりする漁業のことを指します。
「定置網」は、イカの通り道に網を仕掛け、網の中に誘導して入ったイカを捕まえる網です。木下さんが網で狙うのは、ヤリイカです。
テレビなどに取り上げられる花形の漁業だと、マグロのような大きな魚がかかったり、大きな定置網で1日に数トンの水揚げがあったりと、ドカン!と大当たりするような感じがありますよね。
木下さんのような漁業は、1枚1枚コンブを浜に干したり、1個1個ウニの殻をむいて出荷したりと、とても地味で堅実な作業です。収入的にもとびぬけて大きくはないものの、大きな変動ではなく安定しています。
木下さんは「獲るものは余ってある」(たくさんあって獲りきれない)、「やり方によってはいい収入になる」と語っています。
佐井村を支える堅実な漁業にぜひ注目してください。
↓インタビュー本編をぜひご覧ください↓






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(写真 イカ網の網おこしに向かう早朝)
【漁師・木下さんインタビュー】
――どんな漁をしているのですが?

うちは主に採介藻(海藻や貝類、うにの採取)、それから春のヤリイカ(定置網漁)に集中して、年間のスケジュールがあって取り組んでいる感じだね。
――順を追ってどんな漁をしているか教えてもらえますか?
まず、ヤリイカの網。うちの場合は自分1人でやるんでなく、2軒の漁師で協力して一緒に網をやってる。毎年1月15日から準備を始めるのさ。もし1月15日が大安でなければ日をずらして、2月5日の建て込みに向けて準備する。漁師はそういう日取りとかは大事にするね。
2月に海に網を入れると、あとは6月中旬に網を海からあげて片付けるまで、ずっと入れて、定期的に網おこしをしてヤリイカがかかったらあげることになる。
――網以外の漁は他に何がありますか?
まず1月から3月は、大きなのはアワビ獲り。でもこれは決められた日で、月に1回か2回しかない。
他の日はタコ獲り。ミズダコを延縄漁で約180mの縄を3つ入れていて、釣り上げる。それからナマコ獲りもあって、箱メガネで水中をのぞいてナマコを獲る。
冬はこのアワビ、タコ、ナマコがメイン。
――3月になると養殖わかめの収穫もありますね。
そうだね。うちは養殖わかめをやってる。3基やっているんだけど、養殖わかめは8月に道具の手入れをして、10月に種付け。3月に収穫で、刈り取り作業をする。
今年は3月15日から収穫したんだけど、来年はもっと早めようかと思っている。海水温が高いので、わかめの成長が年々早まっている。いいものをそれにあった時期に出さないといけない。
養殖の浮きとかには、ムラサキイガイとかがいっぱいつくので、手作業で落とす。道具の手入れはやっぱり手を抜けない。それを夏場、今ちょうどやってるところだね。
――4月からは佐井村のウニ漁が解禁になります。
毎年決まっていて、4月1日からうにカゴ漁、6月になると箱メガネでのぞいて獲る突きうに漁が始まる。うには仕事の中でも大事だね。そして春先はヤリイカの漁も盛んになる。
それ以外の春から夏にかけてだと、コンブ漁がある。コンブも箱メガネで海をのぞいて、長い漁具を海に入れ、それを使ってコンブにひっかけてねじり獲るような感じ。
そのほかに6月からいろいろな海藻の収穫がある。モズク、海ソーメン、テングサとか、獲るものがいっぱいある。年取って手が回らなくなってきた。
獲るものはいっぱいあるんだけど。やる気になれば余ってあるんだけどなあ。
――9月以降のうに終了後はどうでしょう
一年コンブ(若いコンブ)の採取がある。
それから陸からヒラメ釣りなどをする。
10月にはさっき話したわかめの種付けがあって、11月からは冬のアワビ、タコ、ナマコの漁に入っていく感じ。
合間にはもちろん、網や道具の手入れをすることになる。
――収入的にはどうでしょうか?
年間の売り上げとしては、数百万で、最低で300万、年によっては倍以上に伸びる年もある。この中にもちろん経費もかかるが、経費が非常に少ない。3分の1もかからない。
一番お金がかかる網についても、数十万程度。もちろん日ごろの手入れや準備をしておいてという前提だけど。
他の漁は、かかっても油代ぐらい。漁具はほとんど自分で作るからね。
新しく漁をやる人も、やり方によっては、いい収入にできると思う。
テングサとかでも、自分で加工して販売したりすればもっと伸ばす余地はあると思う。
――若いころはもっと稼げましたか?
若いころはもっとできたというのは、まああるかな。
今は、年取ったというのもあるけど、他にも問題がある。
問題のひとつは、海で獲ってくることだけでなく、陸で作業する必要があること。海藻だったらごみを取ったりする作業が必要。
昔だったら、家族の人手がたくさんあって、親父もやってくれたので、自分は獲ってきてあとの作業は任せてまた海へ、ということができたけど、今は人手が足りないということがあって、自分も作業しないといけないから、そういうことができない。獲っても陸の作業に手が回らないという状況。人を雇うとまた大変なので、その手間をどう確保するかが課題だね。
今の時期のコンブにしても、1枚1枚ばらして干す作業をするのは手間がかかる。夏には当然昼間、いちばん暑い時期の作業だから大変だね。
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(写真 ふのりを浜のシートに広げ、乾燥させる作業)
――年によっての変動はありますか?漁師特有の不安定さというのがあるものでしょうか?
それはあまりない。
ひとつのものに大きく依存するのではなく、たくさんのものを獲っているから。例え何かひとつあまり獲れないものがあっても、他でカバーできる。うにが悪くても海藻がいいとか。
それは佐井村の漁師のいいところだね。
――熟練の技は必要ですか? 自分が若いころと比べるとどうですか?
技術はもちろん獲れ方に影響がある。やっぱり慣れていると違う。
でも、若いころと比べるか、うーん、考えたことないなあ。といっても若いときはまあ体力があったからね(笑)
海藻だったら獲る場所も重要。自分で何カ所か場所を知っていて、毎年獲る前に下見をする。年によって生えている状況や質も違うんだよね。それを見極めることが重要。
それにもちろん道具や技術も関わってくるね。
――収入が悪くないのに、後継ぎがあまり出てこないですね
やっぱり今の人は汗水たらすのが嫌なのかなあ。
厳しい仕事ではある。夏だったら、どんなに暑くても時間になればコンブ獲りにでなきゃいけない。
今の若い人は30度の暑い中で仕事したがらないね。
自分たちはもう慣れて、苦労してもこれが自分たちの仕事だと思ってやってるけど、若い人から見たら、ちょっと、という感じじゃないかな。価値観がやっぱり変わっているからね。
獲るものはあるので、あとはやり方だね。
――やり方次第で可能性がありそうですね。
そうだね。やっぱり楽しいよ。今でも自分も勉強してる立場。
――漁がない日とか、何してます?趣味とかは?
ものづくりは好きなので、漁がない日には擬餌針などの漁具づくりをしてるね。人に頼まれて作ることも結構ある。
趣味といえば盆栽。花が好きなんだよね。
――ありがとうございました。