2015年4月、佐井村漁協の池田さんが、私に急に話を振ってくれました。
「いやあ、ホタテの養殖に成功しちゃったんだけど、どうしよう」
は? という感じでした。
佐井でホタテ養殖をしているという話も知らなかったし、成功したなんてもっと知らなかったのです。
津軽海峡は、冬は特に波が荒く、養殖に適しません。
むつ湾だったらカゴ式でホタテを養殖したり、三陸だったらイカダで海苔なども養殖していますが、
津軽海峡では、今のところ、養殖があまりできないのです。
今回のホタテ養殖を試験的に行った漁協でも、「できると思っていなかった」ということで、成功したらどうするという計画は全くなかったのです。だから、冒頭の成功してどうしようとなってしまったんですね。
まあとりあえず、見ないことには始まりません。
凪の日を狙って連れて行ってもらいます。といっても2-3分で着くような沿岸です。
あがってきたこれが佐井のホタテ!
荒波を耐えたことから、ド根性ホタテと名付けることになりました。
命名は、漁協で担当している池田さんです。
ホタテの養殖は、30年前から、何度かやってみていたようです。
しかし、荒波で養殖の装置が壊れたり、ホタテが死んでしまったりと、失敗し続けていました。
今回、漁業資材屋さんの提案で、新しいポケット方式の養殖装置を試用。
そうしたところ、初めてうまくいったのだそうです。
昨年11月、12月、特に大きな時化がありました。台風以上の爆弾低気圧で、どうなることかと思われましたが、なんと乗り切った。
そして、2月は例年荒波が押し寄せますが、それも乗り切った。
青森の他の地域で利用されているカゴ式だと装置が壊れてしまいますが、
ポケット式だと波の衝撃を吸収してくれて、なんとか維持できるということのようです。
そして、6月の収穫にこぎつけたのです。
上の写真は、きれいにホタテが並んでいますが、これは装置を手入れした結果です。
手入れをする前は、こんな感じ。
ホタテは全く見えませんね。
これは、昆布が装置に根付いて成長した状態です。あまりに昆布が密集すると、ホタテが窒息するので、取ってしまわないといけません。
むつ湾内だとこのようなことはないそうです。
湾内とは栄養状態や波の状態など全く違うので、かかる手間も、できる味も違います。
このぶん、手間がかかってしまいます。
今回は養殖に成功しましたが、漁師が実際に継続してやるかどうかが、次の課題です。
手間もかかりますし、資材に費用も掛かります。
でも、養殖が軌道に乗れば、大きな収入源になります。
後継者がいないというのは、収入が安定しない、というのが大きな理由のひとつ。
ホタテでも、また何か別のものをやるにしても、収入が見込めるものができるのは、いいことなのです。
味については、私は素人なのですが・・・
おいしいかどうかで言えば、おいしいです。大きさも他の産地のものに負けない、大きく色の良いホタテです。
荒波に揉まれているので、他の産地よりも歯ごたえがあった、というのは、私が聞いた別の方の感想です。